風呂屋

どうせなら 風呂屋に一緒に行ける人がいい それも 古い、崩れかかったような風呂屋がいい 閉まった商店街を歩いて 横にそれたところにある、一軒の風呂屋 シャンプーは僕のをあげるから と、僕は僕で番台で新しいのを買った お湯は思ったよりも熱かった これ…

古本屋的な、余りに古本屋的な

去年に書いた下書きがあったので、最後の段落だけ加筆してそのまま投稿する。 殺されるくらいなら、死んでやるの覚悟で。 ................,.......................,..................,............ 強い熱情があって始めた商売でもない。 だらだらと、ぎ…

金木犀の匂いが私の夏を殺しました。

下書きを見てみると、去年の秋にこのような文章を残しておった。もったいないので、途中書きだが、そのままあげる。 いやはや、けったい亜熱帯、シミッタレ。 そんな文章。 ********* 蛍光灯の明かりの下で黙々と発送作業をしていてる。今日は気持…

悲しみは御家芸。

「また病気になっちゃったんです」 と彼女は言っていた。 仕事辞めようと思って、あ、でも来年3月までは。引き継ぎとかしないといけないので。それだけ伝えようと思って、じゃあ、また。 と言っていた。 そんな彼女に、 「共に頑張りましょう」 と声をかけて…

古本屋で死ね

店を終えた日曜日の夜は、どこかに消えたくなるね。車に乗って。どこでもいいの、どこかに消えたくなるよ。そんなどこかはどこにもないんだけど。遠くにいけないよ。明日もあるからさ。雨が少しだけ降ってたけ。お腹が空いてただけなのかも。珈琲が飲みたく…

店、開けずとも(防空壕における読書のすすめ)

久しぶりのブログ更新。 店臨時休業中のダメ店主です。 今週月曜の朝、というより未明。 右眼に激痛が走り、起きて見てみると赤く充血。どうやら、やばそうだとすぐさま病院で診てもらうと、思ったよりもひどかったようで.「角膜潰瘍」というものになったら…

悲しみで心はいつも半分濡れている。

毎朝 ポストを見て 出してもいない手紙の返事を待つのが 私の幸福です 私の幸福は ここになくていいと思う 遠くにあってほしい 感じれただけで それで 毎晩 テレビを見て 何気なく笑ってしまった声が響いたのが 私の悲しみです 悲しみで心はいつも半分濡れて…

酒も涙も言い訳と。

昨晩はお酒を飲みすぎた。 昨晩は、である。 昨晩も、ではなく。 そこは強く主張していたい。 (日付が変わってしまったので正確には一昨日か) 書かなくてはいけない、小さな原稿も遅々として進まず、進まなければ酒を飲みたくなる。 「ちょっと学んでくる」…

「ラジオは時々、神の声を流す」

時々、宛名も住所も書いていない手紙を貰うことがある。書いてあったとしても返信不要と書いてあったりもする。それを僕は黄色いポストから受け取り、開け、読む。そこに書かれた文字を読みながら、書かれなかった時間について考えたりもする。僕は瞬間的に…

何に酔う。

店を終えて、隣町まで久しぶりに呑みにでる。 いつもの白いカウンターのお店。 空いてる席がひとつしかなかった。 中年夫婦と酔った爺さん二人組の間。 僕が頼むまでもく「麒麟よね」 もう何回も繰り返された言葉。 「ゾウさんのほうがもっと好きです」 と心…

ものがたり中毒(あるいは二日酔い)

月夜の晩、住宅街の公園。遊具も鉄棒なんかしかないような、寂しい、少し広い公園。 男と女がふたり並んで、藤の花が屋根になっているようなベンチに座っている。男と女がふたり並んで。ベンチに座っている。猫なんかが歩いていたりする。女は煙草を吸ってい…

書けなかったもの。

「大きくなったら何になりたい?」 そんな問いを今になっても時々考える。 僕は、本当は、何になりたかったのだろう。 幼稚園のとき、僕は水博士と言っていた。 そのとき、水遊びが好きだったから。 ただそれだけの理由。 小学生の時は、お笑い芸人と書いて…

夏の雪が降っている

夏は人の死が肌の近くに感じられて、 それが薄着のせいなのか お盆なんてもののせいなのか、 わからないけれど、 幽霊が見えたらいいなと お腹が空くたびに思ってしまう。 水族館にいる魚は ほとんど死んでいるみたいだった。 死んでしまった人の左手にも 生…

売る魂もない。

「あの人は魂を売ったね」 という言葉があって、そんな魂を買った人は何円で買ったのだろう。買った魂をどうするのだろう。そもそも魂は売り買いすることができるものだろうか。中古品の魂だなんて、欲しい人なんているのかしら。そんな僕は売る魂もない。売…

口を噤んでしまったときの声。

「この予想は外れてほしいのだが、この先、たぶん日本は貧乏になると思われる。豊かになると、貧乏生活のためのインフラや文化が失われる。復興といっても、今まで通りの生活レベルに戻すだけでなく、貧乏でも楽しく生きていく道も考えていきたい。それが今…

Taxi driver

店をはじめるとき、夜になると商店街沿いに並ぶタクシーが気になっていた。 歓楽街から帰る、呑んベエ客を待つタクシーの波。一台、また一台と流れやってきては、波のひとつはそこに漂う。 その表通りから一本路地へ入ったところに店を構えた僕は、そんなタ…

唐揚げにレモンをかけることに戸惑いながら

だいたいのことは分からない 分からないなりに、「あ、はい」と返事する 分からないなりに、「申し訳ありません」とメール打つ 気づけば笑っていたのだ その方が楽だからか 気づけば、笑ってしまうのだ その方が嘘ではないから (小説家になると言っていた高…

死ぬのはあと一週間待ってほしい

「いつ死んでもいいと思っとるんよね」 誰がいったか僕がいったか いついったか ほんまにそうかな不安なって考えた。 いや、そうでもないわ そこまで潔くはないさ 今日死ぬのちょっと早いわ 明日もちょっと いや結構嫌だ たぶん そうだ あと一週間待ってほし…

一夜分の本たち

ゲストハウスの仕事を終えて、家に帰る。というよりは店に帰る。二階は暮らしている部屋で一階が店なので、どちらでもあっているのだけれど、店に帰るというのもおかしな表現だ。 23時古本屋オープン。さきほどまでゲストハウスの番台に座っていたのが、今度…

敗戦布告。

初めから負けているのなら、僕らが守ろうとしているものは何なのでしょうか? 誰かを殺してまで。掬いとろうとしたものは?欲しいものはもう何もないかもしれないのに、どこに行きたいというの。 いつもいつでも逃げたいよ。けれどどこに逃げるというの。逃…

忘れもの。

お昼をやけに静かで暗い食堂ですませて、出ようとしたとき、マフラーがないことに気づく。机の下を覗き込んでみても見つからない。おそらく、さっき乗ってきたバスに忘れたらしい。忘れ物の問い合わせの電話をいれて、調べでみますので、夕方頃に再度問い合…

二〇一五年一月ノ京都ハ雪。(サークルKサンクスの思い出)

サークルKサンクスが、11月末をもって無くなるらしい。ファミリーマートに変わっちゃうらしい。広島ではあまり馴染みのないコンビニチェーンだったが、学生時代を過ごした京都ではだいぶお世話になった気がする。 入学する前に父親が京都市街地図を僕にく…

深夜3時、異常なし

「今夜もオープンしました。23:00-27:00.」 おそらく昨日もオープンしました。 たぶん明日もオープンするでしょう。 繰り返し繰り返した行いを 続けていくこと。 お店とはと考えることも 一時放棄して。 あの本を書いた人はもう死んだ人 あの本を買った人は…

夢の中で初雪をみた。

夢の中で初雪をみた。 外の路地に薄っすらと雪が積もり、空を見上げると白いのが絶えず降っていた。 今朝もよく冷えたからだろうか。シェアハウスの同居人が毛布をかぶせてくれていた。薄いブランケットに顔まで包まり、寒そうにしていたらしい。早く二階の…

孤独を飼いならして、時々可愛がる

雑誌CREA11月号にて、選書の機会を頂いた。 名だたる日本全国の本屋の店主さんもとい、書店員さんの名前のなかに自分の名前があるのは、身分不相応とも思いながらも有難い限りだと思う。 お店をされている方には、雑誌の取材やテレビ取材などメディア露出を…

閉じられた時間と開かれた部屋

今夜も深夜に古本屋を開けている。 なるべく、毎日開けていていたい。のは、お客さんのためにというと偽善的すぎる。どちらかというと、やはり自分のためだ。店を閉めていたのでは本は一向に売れていかないのだし、つまりそれはお金が僕の懐に入ってこないと…

戦場の古本屋、脱走兵の店主

今日もまた、 路地むこうの迫撃砲の音で目がさめた。 隣の元産婦人科の解体工事がこの数か月にわたり続いている。朝八時から夕方五時まで、平日の毎日。文章にするとあっさりだが、実際に体験してみてほしい。ショベルカーの無限軌道は戦車の音のようであり…

古本潜水

夜、僕は扉を開ける 夜、僕は窓を開ける 電気をつける ラジオの周波数をなでる 本たちは今日も棚のなかで眠っている にもかかわらず僕は起こしてしまうのだ 彼らが子なら、僕は布団をはぐ親だろうか 可愛い本には旅をさせろ、と言ったりか 23時開店。 「夜」…

夜をやり過ごす時間

深夜。 この街を脱走したくなりませんか? 目的地はどこでもいいんですが、 例えばファミリーレストランでいいんですが、何からの脱走か分からないんですが、 まぁまぁ仲のいい友達を途中で誘ってですね。互いに本とか持っていったりして(もちろん読みかけの…

栞と文庫

栞ほどの悲しみを 文庫本ほどの幸福に 挟みながら暮らす 幸福を読み始めるごとに 悲しみを抜き取る その栞をなくしてまうと、 どこまで読んだか分からなくる 残りの幸福の時間を時々見失う 幸せはいつもポケットに入っている 君と半分にする予定の饅頭や 帰…