夢の中で初雪をみた。

夢の中で初雪をみた。

外の路地に薄っすらと雪が積もり、空を見上げると白いのが絶えず降っていた。

今朝もよく冷えたからだろうか。シェアハウスの同居人が毛布をかぶせてくれていた。薄いブランケットに顔まで包まり、寒そうにしていたらしい。早く二階の自室へあがればよいものを、怠け者は棺桶をソファでこしらえる。

 

不思議な夢だった。でも綺麗な雪だった。

その日は(夢の中の、その日)は新開に呑みにでようしていた。なにやら、新しい立ち飲み屋ができたらしい。早足で路地をかけていくと、あったあった。赤提灯と、紺の暖簾。ガラス扉のむこうは蛍光灯の下でおでんの湯気。そうだよ、これだよ。僕が近所に欲しかった呑み屋はこれ。さっと呑めて、さっと酔えるお店。ちらりと覗くと地元の爺さんたちがひとりとふたり。昼間から赤ら顔の様子。今日はこのあと用事もあるし、さきに済ませてから、あとで来よう。

もと来た道を引き返し、シェアハウスに帰った。そこで場面は途切れて、というよりは忘れた。も一度、さぁ呑みに出ようと引戸を開けると路地に薄っすらと。見上げれば次々と。

後ろを振り返り同居人のバクト君に

 

「おい、雪だよ雪!積もってるよ」

 

自分でもびっくりするくらいのはしゃいだ声がでた。え、ほんとにぃと返事を聞いて、路地に出ようとしたら、目が覚めた。

 

本物のバクト君は、台所に立って洗い物をしている。本物の僕はソファに沈んでいた。

「雪を見たよ。夢の中で。初雪だよ」

よく覚えてるねぇと鼻で笑われながら、僕はも一度毛布の中へ。恋しいというか、惜しいというか。ここで惜しいのは雪か、はたまた酒か。「どちらとも」というのが本音か。

 

雪見酒の季節まではまだ遠い、

秋のとある朝の話。

頭にはフケが積もっている。