水を飲む
ひとりの男が立っていた
畑の畦道の上で
車が通るたびに白い煙がまう道で
向こうの山は低くも高く
さらにその上はいつもながらの青だ
いつもながらの青だのに
いつもながらの光があるのに
その下にいる僕らは光沢を反射しない
先ほどまで艶やかであった暮らしの品々は
泥にまみれ、水に濡れ、壊され、
何かを産むためにあった手たちは
スコップを握り、
泥にまみれ、汗に濡れ、捨てるために使われた
男は水を飲む、塩を舐める、西瓜を食らう
生きるためにというよりは、
死ななかったためであろうか
あるいは、声に時間を与えるかのように
水を飲んでいる。