2018-01-01から1年間の記事一覧

忘れもの。

お昼をやけに静かで暗い食堂ですませて、出ようとしたとき、マフラーがないことに気づく。机の下を覗き込んでみても見つからない。おそらく、さっき乗ってきたバスに忘れたらしい。忘れ物の問い合わせの電話をいれて、調べでみますので、夕方頃に再度問い合…

二〇一五年一月ノ京都ハ雪。(サークルKサンクスの思い出)

サークルKサンクスが、11月末をもって無くなるらしい。ファミリーマートに変わっちゃうらしい。広島ではあまり馴染みのないコンビニチェーンだったが、学生時代を過ごした京都ではだいぶお世話になった気がする。 入学する前に父親が京都市街地図を僕にく…

深夜3時、異常なし

「今夜もオープンしました。23:00-27:00.」 おそらく昨日もオープンしました。 たぶん明日もオープンするでしょう。 繰り返し繰り返した行いを 続けていくこと。 お店とはと考えることも 一時放棄して。 あの本を書いた人はもう死んだ人 あの本を買った人は…

夢の中で初雪をみた。

夢の中で初雪をみた。 外の路地に薄っすらと雪が積もり、空を見上げると白いのが絶えず降っていた。 今朝もよく冷えたからだろうか。シェアハウスの同居人が毛布をかぶせてくれていた。薄いブランケットに顔まで包まり、寒そうにしていたらしい。早く二階の…

孤独を飼いならして、時々可愛がる

雑誌CREA11月号にて、選書の機会を頂いた。 名だたる日本全国の本屋の店主さんもとい、書店員さんの名前のなかに自分の名前があるのは、身分不相応とも思いながらも有難い限りだと思う。 お店をされている方には、雑誌の取材やテレビ取材などメディア露出を…

閉じられた時間と開かれた部屋

今夜も深夜に古本屋を開けている。 なるべく、毎日開けていていたい。のは、お客さんのためにというと偽善的すぎる。どちらかというと、やはり自分のためだ。店を閉めていたのでは本は一向に売れていかないのだし、つまりそれはお金が僕の懐に入ってこないと…

戦場の古本屋、脱走兵の店主

今日もまた、 路地むこうの迫撃砲の音で目がさめた。 隣の元産婦人科の解体工事がこの数か月にわたり続いている。朝八時から夕方五時まで、平日の毎日。文章にするとあっさりだが、実際に体験してみてほしい。ショベルカーの無限軌道は戦車の音のようであり…

古本潜水

夜、僕は扉を開ける 夜、僕は窓を開ける 電気をつける ラジオの周波数をなでる 本たちは今日も棚のなかで眠っている にもかかわらず僕は起こしてしまうのだ 彼らが子なら、僕は布団をはぐ親だろうか 可愛い本には旅をさせろ、と言ったりか 23時開店。 「夜」…

夜をやり過ごす時間

深夜。 この街を脱走したくなりませんか? 目的地はどこでもいいんですが、 例えばファミリーレストランでいいんですが、何からの脱走か分からないんですが、 まぁまぁ仲のいい友達を途中で誘ってですね。互いに本とか持っていったりして(もちろん読みかけの…

栞と文庫

栞ほどの悲しみを 文庫本ほどの幸福に 挟みながら暮らす 幸福を読み始めるごとに 悲しみを抜き取る その栞をなくしてまうと、 どこまで読んだか分からなくる 残りの幸福の時間を時々見失う 幸せはいつもポケットに入っている 君と半分にする予定の饅頭や 帰…

断水中の営業時に思ったこと

暇は余すときに余しておく 金は使えるときに使っておく 酒は飲めるときに呑んでおく 時間に無駄遣いという瞬間はないのだから 本は読まなくてもいい 読まれなくたっていい そう読まなくてもいいし また、読んでもいい。 本はそうあってほしい。 ただ、そこに…

水を飲む

ひとりの男が立っていた 畑の畦道の上で 車が通るたびに白い煙がまう道で 向こうの山は低くも高く さらにその上はいつもながらの青だ いつもながらの青だのに いつもながらの光があるのに その下にいる僕らは光沢を反射しない 先ほどまで艶やかであった暮ら…

さようならの響きで(弐周年の挨拶に代えて)

「お久しぶりです。お元気ですか?」 と、僕が呼びかけている相手は誰だろう。誰に向けて毎日、僕たちは声を発するのだろう。 きっと僕たちは毎日会っているのに。会話も声も顔も合わせていないのだけれど会っている、のに。電車の中で自分を含めた乗客が全…

声にはならない声で(年始の挨拶に代えて)

こんばんは。 あるいは、おはようございます。 それともこんにちは。 いいや、あけましておめでとう なにがめでたいのかは知らないけれど。 きっと君もあなたもそうだと思うのだけれど、 年が明けてしまうというのは悲しいことだね。 年末の街に漂うそわそわ…