2019-01-01から1年間の記事一覧

悲しみで心はいつも半分濡れている。

毎朝 ポストを見て 出してもいない手紙の返事を待つのが 私の幸福です 私の幸福は ここになくていいと思う 遠くにあってほしい 感じれただけで それで 毎晩 テレビを見て 何気なく笑ってしまった声が響いたのが 私の悲しみです 悲しみで心はいつも半分濡れて…

酒も涙も言い訳と。

昨晩はお酒を飲みすぎた。 昨晩は、である。 昨晩も、ではなく。 そこは強く主張していたい。 (日付が変わってしまったので正確には一昨日か) 書かなくてはいけない、小さな原稿も遅々として進まず、進まなければ酒を飲みたくなる。 「ちょっと学んでくる」…

「ラジオは時々、神の声を流す」

時々、宛名も住所も書いていない手紙を貰うことがある。書いてあったとしても返信不要と書いてあったりもする。それを僕は黄色いポストから受け取り、開け、読む。そこに書かれた文字を読みながら、書かれなかった時間について考えたりもする。僕は瞬間的に…

何に酔う。

店を終えて、隣町まで久しぶりに呑みにでる。 いつもの白いカウンターのお店。 空いてる席がひとつしかなかった。 中年夫婦と酔った爺さん二人組の間。 僕が頼むまでもく「麒麟よね」 もう何回も繰り返された言葉。 「ゾウさんのほうがもっと好きです」 と心…

ものがたり中毒(あるいは二日酔い)

月夜の晩、住宅街の公園。遊具も鉄棒なんかしかないような、寂しい、少し広い公園。 男と女がふたり並んで、藤の花が屋根になっているようなベンチに座っている。男と女がふたり並んで。ベンチに座っている。猫なんかが歩いていたりする。女は煙草を吸ってい…

書けなかったもの。

「大きくなったら何になりたい?」 そんな問いを今になっても時々考える。 僕は、本当は、何になりたかったのだろう。 幼稚園のとき、僕は水博士と言っていた。 そのとき、水遊びが好きだったから。 ただそれだけの理由。 小学生の時は、お笑い芸人と書いて…

夏の雪が降っている

夏は人の死が肌の近くに感じられて、 それが薄着のせいなのか お盆なんてもののせいなのか、 わからないけれど、 幽霊が見えたらいいなと お腹が空くたびに思ってしまう。 水族館にいる魚は ほとんど死んでいるみたいだった。 死んでしまった人の左手にも 生…

売る魂もない。

「あの人は魂を売ったね」 という言葉があって、そんな魂を買った人は何円で買ったのだろう。買った魂をどうするのだろう。そもそも魂は売り買いすることができるものだろうか。中古品の魂だなんて、欲しい人なんているのかしら。そんな僕は売る魂もない。売…

口を噤んでしまったときの声。

「この予想は外れてほしいのだが、この先、たぶん日本は貧乏になると思われる。豊かになると、貧乏生活のためのインフラや文化が失われる。復興といっても、今まで通りの生活レベルに戻すだけでなく、貧乏でも楽しく生きていく道も考えていきたい。それが今…

Taxi driver

店をはじめるとき、夜になると商店街沿いに並ぶタクシーが気になっていた。 歓楽街から帰る、呑んベエ客を待つタクシーの波。一台、また一台と流れやってきては、波のひとつはそこに漂う。 その表通りから一本路地へ入ったところに店を構えた僕は、そんなタ…

唐揚げにレモンをかけることに戸惑いながら

だいたいのことは分からない 分からないなりに、「あ、はい」と返事する 分からないなりに、「申し訳ありません」とメール打つ 気づけば笑っていたのだ その方が楽だからか 気づけば、笑ってしまうのだ その方が嘘ではないから (小説家になると言っていた高…

死ぬのはあと一週間待ってほしい

「いつ死んでもいいと思っとるんよね」 誰がいったか僕がいったか いついったか ほんまにそうかな不安なって考えた。 いや、そうでもないわ そこまで潔くはないさ 今日死ぬのちょっと早いわ 明日もちょっと いや結構嫌だ たぶん そうだ あと一週間待ってほし…

一夜分の本たち

ゲストハウスの仕事を終えて、家に帰る。というよりは店に帰る。二階は暮らしている部屋で一階が店なので、どちらでもあっているのだけれど、店に帰るというのもおかしな表現だ。 23時古本屋オープン。さきほどまでゲストハウスの番台に座っていたのが、今度…

敗戦布告。

初めから負けているのなら、僕らが守ろうとしているものは何なのでしょうか? 誰かを殺してまで。掬いとろうとしたものは?欲しいものはもう何もないかもしれないのに、どこに行きたいというの。 いつもいつでも逃げたいよ。けれどどこに逃げるというの。逃…