悲しみは御家芸。

 

「また病気になっちゃったんです」

と彼女は言っていた。

 

仕事辞めようと思って、あ、でも来年3月までは。引き継ぎとかしないといけないので。それだけ伝えようと思って、じゃあ、また。

と言っていた。

 

そんな彼女に、

「共に頑張りましょう」

と声をかけてしまったことを一日中後悔している。その微笑みも彼女にとってコップギリギリのユーモアだったかもしれなかったのに。

これ以上、何と戦えと言うのだろう。

 

勝ち負けがあるなら負けを選んで、

毒を吐きながら飯を食べる。酒を呑む。自虐を自分で笑う。今夜は雨が降った。笑えたことって優しさなのかな。愛しているの言葉で昨日を白く塗りつぶす。今日も海を見ようよ。

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本を売っている時間よりも、お客さんと喋っている時間のほうが長い時がある。

毎日、帰ってくるお客さんの言葉に自分の言葉を重ねる。その殆どが女性で、どうして性別の違いでこうも生きづらいのだろうと思うこともそれなりに。あるいは僕の愚かな会話につきあわせてしまうことも、それなりに。

 

「藤井くん、してる店間違えてるよ」

と言われることもしばしば。

「呑み屋でもした方が儲かるんじゃない」

僕は、カウンターの外側で呑んどるほうが気楽なもんでと答えつつ、笑いつつ。

 

店をするって何かしら。

お客さんって何かしら。

店に立っている時よりも、立っていないときのほうが店らしくあるべきのような気がするんじゃけど、あなたはどんな?店をしていない時間に不機嫌になるくらいじゃったら、やめちないなよ。

 

 

 

これしかないと思え

あなたしかいないと思え

僕しかいないと思え

 

逃げた先が古本屋だった。

隠れた先が深夜だった。

夜と朝の間に隠した頁の切れ端は、

見つからないまま、

僕はまた渡せない物語を書き始める。

 

 

私の全生活が文学。

自分を愛したふりをして、

泣きながら、幸福な迷惑を生きろ

 

 

ps.

ブログの下書きを眺めておったら、こんな文章があった。ほんとうに自分が書いたものだろうかと思いながらも。まぁ、わしだろうな。過去の自分が迷惑だ。迷惑にもならないのもつまらないけれど。