水を飲む

ひとりの男が立っていた 畑の畦道の上で 車が通るたびに白い煙がまう道で 向こうの山は低くも高く さらにその上はいつもながらの青だ いつもながらの青だのに いつもながらの光があるのに その下にいる僕らは光沢を反射しない 先ほどまで艶やかであった暮ら…

さようならの響きで(弐周年の挨拶に代えて)

「お久しぶりです。お元気ですか?」 と、僕が呼びかけている相手は誰だろう。誰に向けて毎日、僕たちは声を発するのだろう。 きっと僕たちは毎日会っているのに。会話も声も顔も合わせていないのだけれど会っている、のに。電車の中で自分を含めた乗客が全…

声にはならない声で(年始の挨拶に代えて)

こんばんは。 あるいは、おはようございます。 それともこんにちは。 いいや、あけましておめでとう なにがめでたいのかは知らないけれど。 きっと君もあなたもそうだと思うのだけれど、 年が明けてしまうというのは悲しいことだね。 年末の街に漂うそわそわ…

何も書かれていない事と近しいのに

詩が書けなくなったから 写真を撮るようになったんです 感じたことを残さなくてもいいように 言葉が見つからないから 歌を歌うようになったんです 意味に足元をすくわれないように 忘れるために思い出しています あなたの鼻歌、振り返った夕日のこと もう、…

詩に濡れること、詩を飲むこと

雨が一行、 また一行と降ってくる 詩と詩とと、降ってくる 水たまりになった言葉は染みて、読めなくなっていく (夜の暗さは行間です) 傘もささず君が、雨に濡れている 守られることも拒んで いま 言葉に濡れた人が扉を開けた その時 僕に何ができるだろうそ…

一声一行、一日一頁。

どうしてなんで、古本屋を始めたのか。 それを僕はいくらでも話すことはできる。友人のとある一言で、本が好きだから、社会不適合者が社会に溶け込むひとつの方法としてetc. けれど、その言葉を語れば語るほど僕は空洞になる。からっぽになる。多く語ること…